2013年度ベスト・アルバム(本編その2)

●何とか連休前には終わらせたい2013年度ベスト・アルバム、早速続きを行ってみましょう。


『Sun』
Mario Biondi

『AOR』
Ed Motta

『Where Does This Door Go』
Mayer Hawthorne

 私にとって、音楽を聴くシチュエーションで一番なのはクルマ、クルマに特に合う音楽と言えばAOR。ということで、昨年はそういったドライヴAORとして芯を捉えた作品がいくつか合った。まとめてご紹介。
 イタリアのちょい悪オヤジを地で行くマリオ・ビオンディ、しかし齢を聞いたら私より全然下で、何と言うか、二十代の頃に野球選手や相撲取りが自分より年下なのを知って驚く感覚を久々に味わった(笑)。
去年マリオはクリスマス・アルバムも出しているのだが、オープニングが“We Wish a Merry Christmas”のWeをMarioに変えたものだった(笑)。何という自己顕示欲。この押し出しの強さが何とも心強い。
で、旧作はもっとラウンジ寄りな作風で、このキャラにこの作風ならちょうどいい、というところだったのだが、新作はあまりちょうど良くない「やり過ぎ感」が出ている。この過剰さを私は「よきもの」として捉えていて、極めつけはシャカ・カーン、インコグニートを従えた“Lowdown”のカヴァー。松坂牛にトロ、といった趣のスーパー・キラー・チューンと言っていいけれど、これはクドすぎるという方も少なくないだろう。そこが分かれ目かな。私的には、こんな濃いのは当分出ないだろう、ということで断然支持です。

 続いて、ブラジルのAORマニア、エジ・モッタ。来日公演にゲスト出演した時のデイヴィッド・T・ウォーカーが凄かった、という評判に惹かれて聴いてみた本作だが、やはり彼の参加曲“Dondi”が頭ひとつ抜けている。久々に神様が本気出した、という感じで、野球ファンには84年オールスター戦の江川的確変、と言えばそのニュアンスが判るだろうか。
 それ以外の曲も「よく判ってるなあ」と感嘆する曲ばかりで、ぜひ次回は日本制作、それも達郎や角松クラスのプロデュースで一枚作って欲しいところです。

 昨年暮れから職場が銀座の近くになり、お昼休みに近辺を歩くのがつかの間の楽しみとなって久しいのだけど、そんなプチ銀ブラにぴったりだったのがメイヤー・ホーソーン。先に取り上げた二人とはうって変わって上品で柳腰。しかしこの押しの弱さがあとを引くんだな。私にとってのキラー・チューンはケンドリック・ラマーを従えた“Crime”。トラック(と言うかギター・リフ)が妙に“人間発電所”にそっくりで、ケンドリック・ラマーの横からデヴ・ラージやNIPPSが出て来そうに感じられるところが面白い。

 ここまでで五枚。もう少し引っ張らせていただいて、あと五枚は次回以降また。