2013年度ベスト・アルバム(本編その1)

●さて、前回は序文だけで終わった2013年度ベスト・アルバムですが、今回は本編行ってみたいと思います。

『The 20/20 Experience』 / Justin Timberlake

 ポップ・ミュージックから革新的な新しいスタイルが生まれることはなくなった。ということが言われて久しい気がするけれど、ジャスティンの復帰シングル“Suit and Tie”は、間違いなくフレッシュな音楽だったと思います。どのように素晴らしいかは、菊地成孔さんがここでおっしゃってるのでご参照下さい。続いてリリースされたアルバムも、冒頭の“Pusher Lover Girl”と“Suit and Tie”のワン・ツー・フィニィッシュがとにかく強烈で、そこで既にノック・アウト。
 で、菊地さんも言うように、フレッシュなのもさることながら、音がいい。昔はリファレンスCDっていうと『The Nightfly』でキマリだったけれど、何年かぶりのリファレンスCD決定版ではなかろうか。そう言えば去年の秋、これとフェイゲンの最新作、あと数枚だけのCDを持って実家に帰省したけど、クルマでジャスティンとフェイゲンだけ延々と聴いていて、少なくとも数日なら飽きることなかったなあ。ドライヴ・ミュージックとしても最高。
 と、言うことなしの最強作であるように見えて、議論が分かれそうなのは、このアルバムの一曲一曲の尺の長さではないだろうか。ここで終ったらいいのに、ってタイミングで終らず、二、三分余計に続く気がする。これが昔の山下達郎“Solid Slider”“Paper Doll”のように「むしろエンディングが楽しみ、もっと続いて」となるような長さならいいのだけど、単に長いだけと言うか、いわゆるディレクターズ・カットが先に本チャンとして来てしまった。というようなな長さで、続編『The 20/20 Experience - 2 of 2』ではそこが更に顕著。
 しかし、そこを今回の「難点」とするのはあまり楽しくない。ここで改めて本作のタイトルをもう一度見てみると、これは「20日間で20曲作った」という意味。「録って出し」である。その勢い故の「編集の甘さ」が作品に残ってしまっているところを、ここはむしろ味わい尽くすのが本作の楽しみ方ではないだろうか。

『Blurred Lines』 / Robin Thicke

 2011年のベストはロビン・シック『Love After War』だった。その前の年も、ロビン・シックの新作がその年のベスト、という年が何年か続いたように思う。今現在のどんな黒人シンガーよりも「スウィート・ソウル」を体現している存在はシックを置いて他にはないんではないか。
 そんな彼が“Blurrd Lines”で再ブレイクを果たしたのは、大ファンとして喜ばしいことだったし、続くこのアルバムも、大ヒットの勢いそのままの充実作で、特に“Ooo La La”“Ain't No Hat 4 That”といった爽やかカッティング系の曲が並ぶアルバム前半は本当に素晴らしい、の、だが・・・・・・。やはり『Love After War』がシック式美メロの集大成だっただけに、今回の美メロ要素の大幅縮小は淋しい。とは言え、『Love After War』は全米チャートでトップ20に入らなかったと言うから、ここでの路線変更は致し方なかったところなのかも。ひと通り落ち着いたら、また美メロ満載のアルバムも聴かせて欲しいところだ。ちなみに、“Blurrd Lines”のヴィデオでは私はAKBのやつがお気に入り。いつもいつも制服みたいなのを着せられてばかりより、こっちの方が彼女たちも楽しかろうと思う。

 この二作にダフト・パンクのアルバムが、昨年の大ヒット・アルバムで私もよく聴いた三枚、ということになるが、ダフト・パンクはさすがに私が言わなくても皆様大好きだろう、ということでベストには入れません。
 と、二枚紹介したところで、この週末もそろそろ時間切れ。あと八枚は来週末また。