2013年度ベスト・アルバム(本編その3)
●連休に入ってしまいましたが、2013年度ベストテンの続き。そそくさと行きます。
●『Feel Good』
The Internet
詳細情報はこちらを。全曲試聴もできるようです。
これは深夜ドライヴ、それも、もうすぐ夜が明けるその少し前の、空いた高速を走る時に聴くと良さそう。昔ならそんな時間には『Solo Monk』でキマリだったけれど、今ならこのアルバムだね。だけど、気がつくとそんなシチュエーションもごぶさただ。かつては夜明けと共に眠る日々を過ごしていたのに、いつの間にか昼夜逆転してしまった自分の日々が若干淋しくもあるけれど、もしまた夜を取り戻すことができたなら、このアルバムのことを思い出そう。
●『Satellite Love』
Giovanca
顔立ちやメイクはキツめなのに声はサラサラで、日本で言うと今井美樹のような存在感のジョヴァンカ。基本的に、音楽にあまり思い入れのない人々にお薦めしやすい、淡い味わいの音楽という印象ながら、どの曲も意外なほどしっかり作られていて飽きさせないのも共通している。今回のアルバムでは、初秋を軽快にドライヴするのによく合う“No More”、春先のお花見歩きに合いそうな“Lockdown”などが出色の出来。
●『Lady』
Lady
女性ヴォーカルものでは他に、ソウル/R&Bとしては堂々たる決定盤と言えるクリセット・ミシェル『Better』、キッチュな味わいも残しつつより本格的にグルーヴ感を増したマイリー・トッド『Escapology』なども素晴らしく、曲単位で言ったらシェレーア“Love Fell on Me Feat.Stevie Wonder”(←ユーチューブのリンクです。何か八神純子とかの昔のニュー・ミュージックみたいですごく聴きやすいですよ。『Love Fell on Me』収録)が私のレコード大賞新人賞だったけれども、選考に当たり、私くらい選ばないと埋もれてしまうかも、という危機感を一番感じさせたため最終選考に残ったのがレディ。詳細はこちらを。
このふたりのうちテリー・ウォーカーの2006年の『アイ・アム』はホント大好きなんだけど、しばし音沙汰のなかった彼女の健在ぶりが今回確かめられてとても嬉しかった。
今回のアルバムは生音中心のサウンド・プロダクションで、こういうのは日本のソウル/R&Bファンの方が受け入れやすいんじゃないかと思う。“Money”って曲の持つ爽やかさなんか特に。
しかしグループ名も曲名もシンプル過ぎて、検索で引っかからないのではないか。ということでちょっとエコひいきしてみた次第。とか書きながら検索していたところ、テリーのソロ新作も出るらしいという情報が。これは楽しみだなあ。
私、実はクリスマス・ソング愛好家でして、去年はクリスマス・アルバムの結構なリリース・ラッシュで嬉しい悲鳴だったんですが(前も触れたマリオ・ビオンディやメアリー・J.ブライジなど)、とりわけ心に残ったのはニック・ロウ。
クリスマス・ソングを聴きまくっていると、スタンダードのリメイクで心動かされる場合はほとんどなく、逆に「一、二曲だけ入っている新作クリスマス・ソング」が勝負の分かれ目だったりします。その点今回のニックのアルバムはほとんどがオリジナルで、かつ、“Christmas at the Airport”“Just to Be with You (This Christmas)”と、二曲も「新しいクリスマス・ソングの名曲が!」と。それだけでヤラレてしまいます。今回、空港クリスマスはそこそこ人口に膾炙しそうな気がしているんですが、その分後者が埋もれないよう選んでみた次第。しかしニック・ロウは第二のNRBQ化しつつあるなー。
●『Beyoncé』
Beyoncé
そして最後にビヨンセ。CDだけを通して聴いたあとには、いかにもファレルらしいキャッチーな音像が春にぴったりな“Blow”ばかりを繰り返し聴いていたけれど。やはり、(先週やっと通して見た)映像集を通らなければ、本作の真髄は判らない。
あらゆる階層を越えて八面六臂の演技を見せるビヨンセ、しかし、観た者の印象として最後に残るのは彼女の肉体性。「ひとつ告白があるの、この大きなお尻は私の誇りなのよ、ベイビー、顔に擦りつけてあげるわね」(“Rocket”より)とまで歌うのは伊達じゃない。
●と、何とかベスト・アルバム10枚選びましたが、本当は日本の音楽も入れたベストテンにする予定でした。しかし選んでいるうちに海外作品だけでいっぱいに・・・・・・ということで、次回続編として『日本の2013年度ベスト5』をやろうと思います。もうとっくに2013年じゃないのに申し訳ないところですが、あと一回お付き合いを。