去年のベストテン
●皆さんこんにちは。すっかり年も明けて久しいですが、遅れ馳せながら「昨年良かったものベストテン」を書いて今年のスタートとしたいと思います。
■『Don’t Let It Die』ハリケーン・スミス[CD]
十数年振りに、たくさんCDを聴く生活に戻ったので、昨年の新譜CDについては別に十選を選んで書いてみたいと思っているけども、まずは新譜以外で。
ハリケーン・スミスは、二月頃ラジオで聴いて気に入ってCDを手に入れて、引越しの頃によく聴いた。同時期に震災が起こり、テレビやラジオで普通に音楽がかかりにくくなっていたため、余計そればかり聴いた印象もある。とぼけたしわがれ声と、人懐っこいメロディが、とても心和ませてくれた。
■『サンバ歌謡の女王』エリゼッチ・カルドーゾ[CD]
■『キューバ音楽の真実』[CD]
■『ルーズ・シューズ・アンド・タイト・プッシー』アレックス・チルトン[CD]
引越しをして妻と同居を始めたため、聴く音楽もどうしても自分の好みだけではなく、妻と合意の上のものになる。そんな「家庭内ヒット・アルバム」を三つほど。
夏頃はキューバの音楽が妻ウケが良く、何かとよく聴いた。実際、夕食どきにキューバ音楽がかかっていると華やかで食欲も湧くし、作っている妻も家事が捗るだろうな、と思ったものである。
特に妻が気に入ってくれたのが上記二枚。キューバのディーヴァ、ってことで言うとオマーラ・ポルトゥオンドが妻ウケ2位で、ダントツ1位は優美な歌声のカルドーゾという感じだった。
そう言えば昨年は、この二枚にも深くかかわられた中村とうようさんも亡くなられた。こういった音楽の良さを伝えて下さったということで大いに感謝するけれども、そういった通人なのに、「いい音楽を伝える」ことと同じくらいに「悪い音楽をはびこらせるものを糾弾する」活動を多くされていたのがもったいたいなあ、と今は感じる。通人がいちいちセクト争いのようなことをせず、好きな音楽のことだけをニコニコと語れる文化環境を。と強く願う。
ロックのCDも、引っ越し先の図書館には結構あったので、おかげで昨年は「ロック回帰」の年となったけど、こちらは妻ウケはあまりよくなくて、特にエルヴィス・コステロのCDを聴いていると嫌がられたなあ(苦笑)。まあ、コステロ、くどいもんな(笑)。とか言いつつ図書館にあるコステロのCDは全部借り切ったけども。
そんな中、例外的に妻ウケが良かったロックが、アレックス・チルトンのカヴァー集。「このイナタさが良い」と大絶賛で、おかげでこちらも何度も堂々と聴けて嬉しかった。
カヴァー曲のセンスがホント良いんだけど、ギターの弾き方が雑(笑)。弾いちゃいけないとこをミュートしないで、六弦全部鳴らしちゃってる感じ。しかしそこが味なんだなあ。それに、完コピのために何年もかけるより「雑でも良し」として取り組んでくれたおかげで、いい曲をいろいろと知る機会が得られた、ってことには感謝せずにはいられない。そんなチルトンも一昨年亡くなられて残念。生きててカヴァー第二集を作るとしたら、T-ペインとかスヌープとかのメロウめの曲をやったらハマっただろう、と個人的には思うんだけど、もう叶わぬ夢だね。R.I.P.
■ジョニー・ウィンター[ライヴ]
震災のためいろんなライヴが中止になったけども、そんな中来てくれたのがジョニー・ウィンター。
私が音楽について書く文をいつもよく読んでいる人には意外に感じられると思うんだけど、私ジョニー・ウィンターが大好きで、高校生の頃とかにホントに一番「イッちゃう音楽」だったのはジョニー・ウィンター・アンドのライヴ盤だった。あまり「ブルーズ」って意識がなくて、ロックとして最高だと思って聴いていた。とにかくイケイケで押して来るじゃないですか、ジョニー・ウィンターって。それにやられっ放しだったんですね。
今回は、もうトシだし渋いブルーズでもやりに来るのかな、と思っていたところ、案に反して完全にロック、ロック、ロックンロールのライヴだった。“ジョニー・B・グッド”をアンコール以外のタイミングでやるのを久しぶりに見た、って感じ(笑)。しかしそれが嬉しかったなあ。
■ニック・ロウ[ライヴ]
本人含めみんなおじさんばかりで、そういうおじさんたちが魚三酒場とかに行く時みたいなダラッとした服装でステージに上がるので気合が入らないことこの上なかったけれども(苦笑)、しかしその緩さが最高だったね。ポップ・ロカビリーとでも言えばいいのか、バディ・ホリーが今も生きてたら(74歳くらいになりますが)たぶんこんな音楽をやっていただろう、というのを具現化しているような演奏だと思いました。
■ミュージック・プラザ・矢口清治の洋楽ヒット・グラフティ[ラジオ、NHK-FM毎週木曜16:00-17:20]
■世界の快適音楽セレクション[ラジオ、NHK-FM毎週土曜9:00-10:55]
ラジオは好きでいろいろ聞いてて、他にも好きな番組はあるけれど、特に欠かさないのはこのふたつ。
矢口さんのやつはタイマー録音しないと聞けないのが残念だが、素晴らしい番組だと思う。「洋楽」を心底楽しめる番組だ。矢口さんは高校生の頃とかは「ゆるい趣味のヒトだなー」と思ってあまり尊敬してなかったけども(スミマセン)、やっぱり継続は力なりで、その頃と同じような音楽を深化しつつずっとかけ続けていて、紳士的なトークにも磨きをかけ続けているので、今は私のフェイヴァリットDJのひとりである。
ゴンチチの『世界の快適音楽セレクション』は土曜の朝を本当に快適にしてくれる。これを聞きながらゆるゆると起きて、途中で録音に切り替えて近所のスーパーに妻と買い物に行って、枝豆やローストビーフを買って来て。外出中に録音した続きを聞きながら枝豆とビールで過ごす土曜日の昼下がり、ってのは最高。これをきっかけに購入したCDも多かったなあ。
■糖質オフ[生活]
妻の料理がうまく、放って置くと太って服が着られなくなるので、とりあえず糖質オフ生活をすることにして久しい。
お昼はナッツと林檎一個、朝昼晩通して炭水化物は極力食べない(特に夜は厳禁)といった具合。
結果として特に痩せていないが、それは元々の食生活がわりかし糖質オフに近かったため(お酒飲みだから、お米とかほとんど食べなかったし)。痩せないながら、必要以上に太らなくて済んではいる。
まあ、ダイエットもさることながら、味覚がある程度鋭くなるのが楽しいね。たまに食べる蕎麦が本気で旨くて、香りの伝わり方がすごい(その分、おいしくないのに当たると殺意を覚えるけれども<苦笑>)。
この生活を続けていて思うことは、現代人は食べ過ぎだ、ってこと。特に東京のような街で暮らす上では、意識的に食を控えて、一食一食の味を噛みしめることを心がけた方が絶対楽しく暮らせる、ということを実感しています。
■『マイ・オンリー・スリル』メロディ・ガルドー[CD]
最後にまたCDだけど、去年ホントに一番よく聴いたのはラリー・クレインのプロデュース作品群だった。一番売れたマデリン・ペルーに始まり、ラリー・ゴールディングス、ティム・ブルナーなど、どれを聴いても素晴らしかった。
私はコーヒーを淹れるのが好きで、特に豆を挽いて、最初に一滴のお湯を注す瞬間がたまらなくて、もしかしたらコーヒーを飲むより淹れるのが好きなのかな、と思うくらいなんだけど。あの瞬間、コーヒー豆がふわっと膨らんで、部屋が芳しい香りで満たされる瞬間のような音楽だと思う。ラリーはベーシストだけに、包み込むようなサウンド・デザインが得意なのだろう。
一番の必聴盤を挙げるとなるとハービー・ハンコックのジョニ・ミッチェル・トリビュートになるが、個人的に一番馴染み度が高いのは、一番最初に聴いたメロディ・ガルドーということになる。
彼女は交通事故のリハビリ中に作った曲が認められてデビューしたということで。そうすると体に障るような大きい声は出せないわけで、そのせいか結果として耳障りな要素が一切なく、柔らかくてアンニュイな歌声になっている。これは本当に良かった。
●ということで、本当に遅れ馳せながら、今年もよろしくお願いします。